2005-06-29

防災情報ウェブページ障害者ら不便

昨日の西日本新聞の朝刊に興味深い記事がありました。

全国四十七都道府県のホームページ(HP)における「防災情報の伝わりやすさ(ウェブアクセシビリティ)」を、民間のリサーチ会社が調べたところ、全体の九割以上にあたる四十三都道府県で、高齢者や障害者ら”防災弱者”が情報を入手する際にバリア(障害)があることが分かった。

[引用: 防災情報HP障害者ら不便 -- 西日本新聞 2005年(平成17年)6月28日(朝刊)36面 より]

この記事は、新潟県中越地震や福岡県西方沖地震などの大地震をきっかに、防災発生時における自治体が運営するウェブサイトの情報提供の在り方が問われていることから、総務省のウェブアクセシビリティ実証実験を担当しているアライド・ブレインズ株式会社が同社提供の情報伝達度チェッカーを用いて、独自に都道府県ホームページの情報伝達度調査を行ったその結果(同社のウェブ・アクセシビリティ総合サイトA.A.O.にて掲載)についての記事である。記事にて同社は、情報を素早く更新しても、必要とするすべての人に届かなければ意味がない。早急な改善をと指摘している。

私の感想としては、この調査結果は予想通りの散々なものであったが、同社の各都道府県の診断結果一覧において (基本的なアクセシビリティ確保に問題なし)と判断された都道府県のサイトを実際に見てみると、XHTML 1.0 を採用しているサイトが幾つかあったことに、実際に見るまで侮っていた私は驚いてしまった。(侮っていたのには理由があり、私の地元の自治体サイトが酷いものなので・・・。)

例えば、宮崎県の宮崎県庁ホームページは、章節やリスト分類により情報を掴み易い。ただ、マーク付けに少々疑問が残る部分やタグの整合性ミスが多少あるのが残念ではあるが、他県に比べると高い水準と言えよう(まぁ、高い水準と言っても、当然の水準なので誤解しないように)。

そして、アライド・ブレインズ社の調査結果で問題なしと判定された県(宮崎県も含む)のホームページ及び防災情報ページであっても、次のような点を今後見直す必要があるだろう。

以上のような場合であれば、視覚的な体裁はスタイルシートで行える。つまり、各要素は視覚的な表現を目的とした使用をしてはならない。これは、アクセシビリティ云々以前にマーク付けの基本中の基本である。

以上のような場合であれば、他の要素で置き換え表現ができないか?できるならば、他の要素で内容に即した一貫性のあるマーク付けを行うこと。また、特によくある勘違いとして、単なるレイアウト目的でdiv要素やspan要素を用いているのを一般的に見受けることが多々あるが、これも同様のことなので注意が必要である。

他にも、class属性の値に体裁やレイアウトの位置を表す目的の語句(red, left 等)を指定しない。この場合、class属性値をそのまま要素名に置き換えても無理の無い論理的名称にする。等々・・・。指摘すると限がないので、アライド・ブレインズ社が行った調査のように調査内容を幾つかのテーマに絞って指摘する試みは、アクセシビリティ浸透の入り口として大変価値のある試みであると私は思う。それは、新進気鋭のIT企業と呼ばれる数多くの企業すら、アクセシビリティを微塵も感じないとんでもマーク付けを今尚平気で行っているのが現状なのだから・・・。

注釈

以下は、今回登場した用語の解説である。他の語句については、用語集よりお探しください。

アクセシビリティ
インターネットを利用しているあらゆる人どのようなユーザーエージェントを利用していても、また、どのような環境のもとでも提供される情報資源を問題なく利用可能にできること。一般的に普及し使用されているHTML/XHTMLでは、広汎なウェブアクセス性の考慮も踏まえた仕様の策定がなされているが、多くの製作者が本来の在り方を誤認していることから、WAIによる WCAG 1.0 などの国際的なウェブ標準ガイドラインが提唱されている。
ウェブページ
WWW上に存在するウェブ・サイトの場所の一部でブラウザと呼ばれるユーザエージェントにて利用可能なHTMLなどのリソース(資源)を意味する。便宜上用いられる造語である。
ユーザーエージェント
ブラウザを含むサーバーにアクセス(リクエスト)するためのソフトウェアのこと。これには、デスクトップのグラフィカルなブラウザや音声ブラウザ、携帯電話、マルチメディアプレイヤー、プラグイン、及び、スクリーンリーダーのようにブラウザと共に補助的に使用されるスクリーン拡大表示ソフトウェア、音声認識ソフトウェアなども含まれる。
ホームページ
元々、「ホームページ」という造語には二つの概念があり、ひとつは、サーバ内に含まれる情報内容の概要を知りたいと思う人を歓迎する「ウェルカムページ(ホームやデフォルトページ)」。また、ウェブブラウザを起動した際の「デフォルトページ」という意味の別々の概念を持つ。前者の「ウェルカムページ」は、そのサーバを訪れた人がホームページ(後者)として利用するのに便利なので、度々”ホーム”ページと呼ばれる。従って、管理者が用意する”ホームページ”が、必ずしも利用者の”ホーム”ページだとは限らない。詳しくは、WWWの発明者・Tim Berners-Leeティム=バーナーズ=リー氏がEtiquette for information providers [引用: http://www.w3.org/Provider/Style/Etiquette より] にて、その語源について触れている。